東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

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田中十志也 准教授の論文 Scientific Reportsにアクセプト田中十志也准教授が研究されてきましたPPARデルタによるCD300aの活性化と炎症性腸疾患のメカニズムについての論文がscientific reportsにアクセプトされました。PPARデルタのchip-seqから標的遺伝子のD300aを同定し、CD300aのノックアウトマウスにおける腸管の免疫過敏性を明らかにした貴重な仕事です。

2014年06月02日 12時27分00秒 (#158)

Tanaka T, Tahara-Hanaoka S, Nabekura T, Ikeda K, Jiang S, Tsutsumi S, Inagaki T, Magoori K, Higurashi T, Takahashi H, Tachibana K, Tsurutani Y, Raza S, Anai M, Minami T, Wada Y, Yokote K, Doi T, Hamakubo T, Johan A, J. GF, Nakajima A, Aburatani H, Naito M, Shibuya A, Kodama T, Sakai J* (* corresponding authors)
PPAR beta/delta activation of CD300a controls intestinal immunity.
Scientific Reports. 4, 5412, 2014. [DOI] [PubMed]

PARデルタによるCD300aの活性化と炎症性腸疾患のメカニズム

PPARbeta/delta activation of CD300a controls intestinal immunity
Scientific Reports. 2014 

Tanaka T, Tahara-Hanaoka S, Nabekura T, Ikeda K, Jiang S, Tsutsumi S, Inagaki T, Magoori K, Higurashi T, Takahashi H, Tachibana K, Tsurutani Y, Raza S, Anai M, Minami T, Wada Y, Yokote K, Doi T, Hamakubo T, Johan A, J. GF, Nakajima A, Aburatani H, Naito M, Shibuya A, Kodama T, Sakai JPPAR beta/delta activation of CD300a controls intestinal immunity.

Scientific Reports, 4, 5412, 2014. [DOI] [PubMed]

腸管は食事由来のペプチド抗原や腸内細菌由来の抗原に恒常的に暴露されている特殊な器官であることが知られています。また、腸管はマクロファージやT細胞などの免疫細胞を大量に含んでおり独特な免疫系を構築しています。すなわち、腸管免疫系は様々な微生物の侵入を防ぐ目的と同時に、生体にとって有益な食物や共生細菌に対して過剰に免疫応答しない制御機構を有しています。この制御機構の一部には免疫受容体活性化チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif; ITAM)や免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine based-inhibitory motif; ITIM)を有する受容体が関与していることが知られています。

今回、私たちはPPARb/dのトランスクリプトーム解析とクロマチン免疫沈降シーケンシング解析(ChIP-seq)とによってPPARb/dのマクロファージ特異的な標的遺伝子としてITIM含有受容体のCD300aを同定いたしました。CD300a欠損マウスを作成して高脂肪食負荷を行った結果、小腸粘膜固有層に大量のマクロファージ等の免疫細胞の浸潤、脂肪蓄積、泡沫細胞の出現、リンパ節の肥大等を見いだしました。また、腸管において吸収された脂肪がトリグリセリドとして再合成され乳び(chyle)となって吸収されるリンパ管の数と内径の減少が認められ、高脂肪食負荷したCD300a欠損マウスでは脂肪の吸収が阻害されていることが明らかとなりました。その結果、CD300a欠損マウスは野生型マウスと比較して高脂肪食負荷による体重増加が有意に抑制されていることが明らかになりました。この体重増加抑制作用はCD300a欠損マウスの骨髄を移植した野生型マウスでも同様に認められたことから、造血幹細胞由来の細胞に発現するCD300aが関与していることが明らかになりました。

次に、高脂肪食負荷した野生型およびCD300a欠損マウスから得られた腹腔マクロファージを比較すると、野生型マウスではCD300aの誘導および選択的活性化(M2)マクロファージ関連遺伝子の発現が誘導される一方、CD300a欠損マウスの腹腔マクロファージではこれらのM2関連遺伝子の発現誘導は認められず、IL-6やTNFaなどの炎症性サイトカインの発現が増加しており古典的活性化(M1)マクロファージであることが示唆されました。さらに、TLR4のリガンドであるリポポリサッカライドにて腹腔マクロファージを処理すると、CD300a欠損マウス由来の腹腔マクロファージではIL-6の持続的な産生亢進が認められました。以上の結果から、PPARb/d-CD300aシグナル系が腸管免疫系の調節に重要な役割を有していることを明らかにしました。

これまでに私たちはPPARb/dのアゴニストが骨格筋の脂肪酸代謝を亢進させることでメタボリックシンドロームの治療に有効であることを報告してきましたが、今回の結果から炎症性腸疾患(IBD)などに対しても治療効果を発揮するものと期待しております。

Abstract

Macrophages are important for maintaining intestinal immune homeostasis.  Here, we show that PPARbeta/delta  (peroxisome proliferator-activated receptor b/d) directly regulates CD300a in macrophages that express the immunoreceptor tyrosine based-inhibitory motif (ITIM)-containing receptor.  In mice lacking CD300a, high-fat diet (HFD) causes chronic intestinal inflammation with low numbers of intestinal lymph capillaries and dramatically expanded mesenteric lymph nodes.  As a result, these mice exhibit triglyceride malabsorption and reduced body weight gain on HFD.  Peritoneal macrophages from Cd300a-/- mice on HFD are classically M1 activated.  Activation of toll-like receptor 4 (TLR4)/MyD88 signaling by lipopolysaccharide (LPS) results in prolonged IL-6 secretion in Cd300a-/- macrophages.  Bone marrow transplantation confirmed that the phenotype originates from CD300a deficiency in leucocytes.  These results identify CD300a-mediated inhibitory signaling in macrophages as a critical regulator of intestinal immune homeostasis.

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