東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

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Wntシグナルの受容体LRP5を欠損させたマウスでは骨密度の低下とともにインスリン分泌不全による糖代謝異常を引き起こす。 -老化における代謝変化を調節するWnt系の役割-

2003年01月07日 00時00分00秒 (#79)

Fujino T, Asaba H, Kang MJ, Ikeda Y, Sone H, Takada S, Kim DH, Ioka RX, Ono M, Tomoyori H, Okubo M, Murase T, Kamataki A, Yamamoto J, Magoori K, Takahashi S, Miyamoto Y, Oishi H, Nose M, Okazaki M, Usui S, Imaizumi K, Yanagisawa M, Sakai J*(* corresponding author), Yamamoto TT*.
Low-density lipoprotein receptor-related protein 5 (LRP5) is essential for normal cholesterol metabolism and glucose-induced insulin secretion.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Jan 7;100(1):229-34. Epub 2002 Dec 30. [DOI] [PubMed]

来の老化関連疾患研究では、加齢に伴う基礎代謝の低下、骨密度低下、栄養過剰への適応力の低下などが指摘されている。しかし個々の現象を制御し、加齢に伴う代謝変化を決定している基本的調節系は不明です。

私たちはWnt蛋白やWnt受容体の発現量をはじめとするWnt系のシグナルが代謝活性を調節する可能性を発見しました。私たちはWnt受容体(LRP5)欠損マウスの作製・解析から、Wntシグナルが低下し、インスリン分泌不全、易動脈硬化、食後の高脂血症、骨密度低下などの生活習慣病・老化ともいった症状が加齢とともに一層発症しやすくなることを示しました。このマウスでは核内受容体、IGF受容体、IRS2などのシグナル分子の発現が大きく低下しました。

本研究は、Wnt受容体を中心とする転写調節の分子基盤の解析、Wntシグナルと時間軸(加齢)という新しいパラダイムの観点から、脂肪細胞におけるWntシグナルとエピゲノム研究の礎ともなりました。

本論文の発表と前後して、Wntシグナルと骨代謝についてはヒトでのLRP5遺伝子病osteoporosis pseudo-glioma syndromeも発見されました。また糖代謝、動脈硬化とWntシグナルについては、ヒトでのリンケージ解析から2009年までに140報以上もの論文がサイエンス誌やネイチャージェネティックス誌などを始めとし報告されています。

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