東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

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核内受容体PPARδの生活習慣病治療薬への適応 - 運動しなくても余分な脂肪を減らす薬-

2003年12月23日 00時00分00秒 (#77)

Tanaka T, Yamamoto J, Iwasaki S, Asaba H, Hamura H, Ikeda Y, Watanabe M, Magoori K, Ioka RX, Tachibana K, Watanabe Y, Uchiyama Y, Sumi K, Iguchi H, Ito S, Doi T, Hamakubo T, Naito M, Auwerx J, Yanagisawa M, Kodama T, Sakai J* (* corresponding authors).
Activation of peroxisome proliferator-activated receptor delta induces fatty acid beta-oxidation in skeletal muscle and attenuates metabolic syndrome.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Dec 23;100(26):15924-9. Epub 2003 Dec 15. [DOI] [PubMed]

生活習慣病は肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病、加齢などを伴いメタボリックシンドロームとも呼ばれ、心筋梗塞、脳梗塞など血管病変を主とした病気の主原因であります。

核内受容体の一つPeroxisome Proliferator-Activated Receptor δ のアゴニストによる活性化により、骨格筋での脂肪のβ酸化が亢進し、高脂肪食による肥満・糖代謝異常を劇的に改善することを示し、PPARδが治療薬の標的となることを示しました。  網羅的遺伝子発現解析からPPARδの活性化によって、脂肪酸トランスファー、脂肪酸酸化、エネルギーを熱として放出する蛋白(UCP)などが骨格筋細胞で誘導されることが明らかになりました。

このことから核内受容体PPARδを刺激することで、たとえ飽食下であっても脂肪蓄積ではなく燃焼・消費するための遺伝子発現が誘導され、細胞に蓄積された脂肪が消費されることが推定されました。 そこでPPARδの作動薬を高脂肪食下の動物に投与したところ、白色脂肪細胞を中心に貯蔵されている中性脂肪は分解され、劇的に肥満・耐糖能・インスリン感受性を改善がみとめられました。

私たちはPPARδの生活習慣病治療薬への適応を提示いたしました。

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