東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

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甲状腺プロホルモン活性化酵素Iodothyronine Deiodinase 1 (Dio1)遺伝子の転写制御機構の解明 − HNF4α、KLF, GATA4はDio1遺伝子プロモーターを相乗的活性化する (Mol. Cell Biol., MCB.02154-02107) −

2008年06月01日 00時00分00秒 (#53)

Ohguchi H, Tanaka T, Uchida A, Magoori K, Kudo H, Kim I, Daigo K, Sakakibara I, Okamura M, Harigae H, Sasaki T, Osborne TF, Gonzalez FJ, Hamakubo T, Kodama T, Sakai J*(* corresponding author).
Hepatocyte nuclear factor 4alpha contributes to thyroid hormone homeostasis by cooperatively regulating the type 1 iodothyronine deiodinase gene with GATA4 and Kruppel-like transcription factor 9.
Mol Cell Biol. 28, 3917-3931, 2008. [DOI] [PubMed]

甲状腺ホルモンはエネルギー代謝やコレステロール代謝などに重要な役割を担います。甲状腺ホルモンは甲状腺からプロホルモンT4(thyroxin)として分泌され、肝臓や筋肉などで生理的に強い活性を示すT3(3,5,3'-triiodothyronine)へと変換されます。 この変換酵素はiodtyronin deiodinaseとよばれ、局在と調節の異なる2つの酵素(Dio1とDio2)がこれを担います。

Dio1は肝臓に高く発現し、T4をT3に変換する主要な変換酵素です。私たちは肝臓に主要な発現を示す核内受容体HNF4αの肝臓特異的な欠損マウス(H4KivKO)の解析から、肝臓でのDio1のmRNAがほぼ消失していることを見いだしました。 これに伴いDio1酵素活性はH4KivKOマウスにて90%以上の減少が認められました。血中T4とrT3レベルはコントロールFloxマウスと比べ有意な上昇、TSHレベルは減少が認められ、T3レベルには変化が認められませんでした。 T3はDio1やDio2の遺伝子欠損マウスでも変化しないことが既に報告されており、T3を維持する強力なバックアップ機構の存在が示唆されました。マウスDio1のプロモータ解析から、HNF4αresponsive element(HNF4αRE)を見いだし、ここにHNF4αが結合し転写制御を行うことを明らかとしました。

さらに、我々はKruppel-like transcription factor 9 (KLF9)は甲状腺ホルモンで5倍にその転写が上昇することを見いだし、HNF4αREの上流と下流の2つのCACCCボックスを介してDio1プロモータを活性化すること、さらにGATA4とHNF4αが転写複合体を形成し、これを相乗的に活性化すること、クロマチン免疫降法によって内因性のGATA4とKLF9がDio1プロモータに結合することを明らかとしました。 HNF4αとGATA4、KLF9とHNF4αの結合ドメインも共免疫沈降法、GST pull down法、mammalian two hybridにより明らかとした。

以上より、HNF4αがGATA4とそして甲状腺ホルモンによって転写制御されるKLF9によって甲状腺のホメオスタシスを担う新たな転写ネットワークを明らかとしました。

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