東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

Home » 業績集 » 原著論文 » 2011-08-15

松村助教の研究がMol Biol Cellに掲載されました。ABC蛋白CFTRの折り畳みと小胞体関連分解におけるHsc70の結合サイクルの重要性の解明。Role of Hsc70 binding cycle in CFTR folding and endoplasmic reticulum-associated degradation.

2011年08月15日 00時00分00秒 (#84)

Matsumura Y, David LL, Skach WR.
Role of Hsc70 binding cycle in CFTR folding and endoplasmic reticulum-associated degradation.
Mol Biol Cell. 2011 Aug 15;22(16):2797-809. Epub 2011 Jun 22. [DOI] [PubMed]

タンパク質は20種類のアミノ酸が並んだ1本の鎖からなりますが、細胞内でタンパク質が機能するには正しい折り畳み構造をとる必要があります。多くの遺伝子疾患では、たった1つのアミノ酸の置換または欠失変異により折り畳み異常が生じ、タンパク質の機能が失われます。また小胞体で生合成される際に正しく折り畳まれなかった膜タンパク質の多くが、ユビキチン-プロテアソーム経路により分解されます(小胞体関連分解)。

分子シャペロンHsc70は新規合成されたタンパク質の折り畳みを促進しますが、一方でタンパク質分解に関与することも知られています。Hsc70により相反するタンパク質折り畳みとタンパク質分解がどの程度調節されているかは不明でありました。

この論文では嚢胞性線維症の原因遺伝子であるCFTRをモデル基質としてタンパク質生合成および小胞体関連分解をin vitroで再構成し、Hsc70結合の役割を解析しました。Hsc70の核酸交換因子であるBag-1を用いてタンパク質生合成時にHsc70とCFTRの結合を不安定化させると、CFTRはわずかに分解されやすくなりました。

一方でCFTR生合成後にHsc70との結合を不安定化させると、CFTRのユビキチン化・分解は完全に阻害されました。これらの結果はHsc70のタンパク質折り畳みにおける役割は、タンパク質分解における優位かつ必須の役割によって均衡がとられていることを示します。

さらにHsc70とCFTRの結合持続時間が長いと、Hsc70を介してCHIPなどのユビキチンリガーゼがCFTRを認識し、CFTRのユビキチン化・分解が起こりやすくなること­­が明らかになりました。

↑このページの先頭へ