東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

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ノーベル賞受賞者のもとで研究学ぶ


東北大学医学部 艮陵新聞 2012年5月1日 掲載記事

行脚 「ノーベル賞受賞者のもとで研究学ぶ」

東京大学 先端科学技術研究センター 
代謝医学分野 酒井寿郎教授

※ 東北大学医学部艮陵新聞学生編集部の許諾を得て掲載しています。無断での複写・転載を禁じます。

柔道に明け暮れた大学生活

大学時代は学友会と医学部柔道部で柔道を6年間やっていました。当時は、医学部だけの柔道部が無くて、七大戦も出ましたし、東医体にも出ました。団体で全医体まで進んだこともあったと思います。大学時代は柔道に明け暮れていまして、実を言うと大学院に入ってから初めてピペットを手に取ったという感じです。

ノーベル賞受賞者の研究室へ留学

卒後は仙台市立病院で内科研修をしました。心筋梗塞の患者さんがよく救急車で運ばれてきまして、循環器疾患とりわけ動脈硬化に興味を持つようになりました。研修後は、LDL受容体と家族性高コレステロール血症の原因遺伝子(Ldlr)の発見でノーベル賞を受賞されたGoldstein & Brown博士の研究室で活躍された山本徳男教授の研究室で勉強させて頂きました。そこでの私の研究はLDL受容体に次ぐ第2のリポ蛋白受容体の探索で、これが超低密度リポタンパク(VLDL)受容体の発見につながりました。学位取得後は、Goldstein & Brown博士の研究室に留学。帰国後は東北大学に戻り、現在は東京大学にいます。

自分の信念を貫くことが重要

Goldstein & Brown研究室は脂質代謝研究に野心を燃やす人が行くメッカみたいなところで、甲子園のエース級みたいな力ある人が世界中から集まってきました。その中で生き抜くためには、ハードワーカーであり、自分の信念・仮説を貫いていくことが重要でした。

最も大変だったことは、コレステロールの鍵となる転写因子SREBPの活性化機構でした。私のデータはボスの仮説を否定するものだったため、何度もやり直しをさせられました。この時、私は一ポスドク、彼らはノーベル賞学者。自分の仮説を主張し続けることは、とても大変でした。しかし、留学時代の最後に彼らが見つけようとして、私が否定していたまさしくその分子を発現クローニング法で発見したときはとても嬉しかった。

このような経験が帰国後、研究に邁進する原動力になったと思います。この時培った友人関係は、ものすごく大きい。今では世界各地に友人がいるという感じで。学会で会ったり、連絡をとり合ったりしています。

エピゲノム研究を生活習慣病予防へ応用

2001年にヒトのゲノムが解読され、現在ではエピゲノムという概念が、新たに生物学に加わりました。私はこのエピゲノムを肥満・糖尿病などの生活習慣病の分野で、研究をすすめています。これまで、運命決定論的な要素の強かった疾患への観念が、エピゲノムを変えていくことで体質を変えている可能性が見えてきました。私たちは、生活習慣病の予防と治療にエピゲノムに基づいた新しい研究成果が役立つことを期待しています。

学生さんへ

常に「好奇心」を持って頂きたいです。何かを知りたい、明らかにしたい、といった好奇心すべてがdriving forceになると思います。そして、恐れず外にとび出すこと。東北大学は凄くいい大学であることは間違いないが、国内外問わず、とび出してあちこちで腕試しするのもよいことです。新しい学問、新たな治療法開発の芽を探し出して、将来の医学・医療を切り拓いていって下さい。

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