東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

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松村助教の論文がJBCアクセプト!

2013年08月30日 17時18分00秒 (#150)

Endoplasmic reticulum protein quality control is determined by cooperative interactions between Hsp/c70 and the CHIP E3 ligase

Yoshihiro Matsumura1Juro Sakai and William R. Skach

Hsp/c70とCHIP E3リガーゼの協調的な相互作用が小胞体タンパク質の品質管理を決定する

細胞内には約数千種類ものタンパク質が発現しており、個々のタンパク質はタンパク質-タンパク質相互作用を介して多彩な機能を発揮することで細胞の生命活動を支えています。

 ここに3種類のタンパク質X, Y, Zがあったとします。タンパク質Xはタンパク質Yと直接結合し、タンパク質Yはタンパク質Zと直接結合します。タンパク質Xはタンパク質Zと直接結合できませんが、タンパク質Xはタンパク質Zと結合しているタンパク質Y(タンパク質Y-Z複合体)と結合することでタンパク質Zと相互作用することができます。ではタンパク質Xとタンパク質Y-Z複合体の結合はどのように制御されているのでしょう?

では実際にX = CHIP, Y = Hsp70, Z = CFTRとします。ユビキチンE3リガーゼCHIPはテトラトリコペプチドリピート (TPR) ドメインを介して分子シャペロンHsp70 のC末端ドメインと結合します。Hsp70は基質結合ドメインを介して変性タンパク質であるCFTR(嚢胞性線維症の原因遺伝子産物)と結合します。Hsp70とCFTRの結合の強さはHsp70のATPaseドメインに結合するヌクレオチドに依存します (Mol. Biol. Cell, 2011)。CHIPはCFTRと直接結合しませんが、CFTRと結合しているHsp70 (Hsp70-CFTR複合体) と結合することでCFTRと相互作用します。CFTRと相互作用したCHIPはU-boxを介してCFTRのユビキチン化を行い、分解を促進します。

 この論文では野生型とU-boxに変異を入れたCHIPを用い、CFTRと結合していないHsp70ならびにHsp70-CFTR複合体との結合をin vitroで詳細に解析しました。CHIPのU-box変異はATP存在下においてHsp70との結合を促進し、ADP存在下においてHsp70との結合を強く促進しました。またCHIPのU-box変異はCFTRと結合していないHsp70との結合を促進し、Hsp70-CFTR複合体との結合を強く促進しました。従来CHIPはTPRドメインを介してHsp70のC末端ドメインと結合すると単純に考えられていましたが、CHIPのTPRドメインとU-boxドメイン、Hsp70のATPaseドメイン、基質結合ドメインとC末端ドメインのアロステリックな相互作用が CHIPとHsp70の結合に重要であることが明らかになりました。将来CHIP-Hsp70相互作用を阻害する化合物が見つかれば、嚢胞性線維症において変異型CFTRの分解を抑えることが可能になるかもしれません。

Endoplasmic reticulum protein quality control is determined by cooperative interactions between Hsp/c70 and the CHIP E3 ligase
J Biol Chem. 2013 Aug 30. [Epub ahead of print] [DOI] [PubMed]

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