東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

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脂肪細胞分化を抑制する新規のエピゲノム機構を解明。

2014年12月23日 19時54分00秒 (#181)

脂肪細胞がどのように分化しているかの機構を知ることは、肥満の進行やメタボリック症候群といった生活習慣病を理解する上で重要です。本研究では脂肪細胞分化を抑制する新規の機構を解明し、Journal of biological chemistryに発表しました。

脂肪細胞分化は、誘導分化刺激に伴って遺伝子発現が次々にリレーされ、最終的にマスターレギュレータである核内受容体PPARγの発現にたどり着き、脂肪細胞として確立します。PPARγの活性化薬は糖尿病患者さんのインスリンの効きを良くする薬として臨床の場で広く使われています。一方、この転写カスケードとは別に、最終的に脂肪細胞という記憶が定着するためにエピゲノムによる修飾も必要です。我々は脂肪細胞分化とともに誘導されてくるエピゲノム酵素FBXL10(別名KDM2B、JHDM1B)が分化誘導を制御することを見いだしました。プロテオミクス解析の結果、あらたにRING1BというES細胞の未分化状態を制御するのに重要な分子がFBXL10とタンパク質複合体を形成することが見いだされ、そしてこの複合体が脂肪細胞分化のマスターレギュレータである核内受容体PPARγの発現や細胞周期制御遺伝子の発現を調節することがマイクロアレイ法とChIP-Seqから解明されました。本研究は、従来iPS/ES細胞が無秩序に分化しないように未分化状態を維持するにあたってエピゲノムを制御するという重要な役割を果たすポリコームタンパク質群(RING1Bなど)が、脂肪細胞の分化においてFBXL10と新規な複合体を形成することを示しました。その結果、FBXL10が細胞の未分化性と脂肪細胞への分化の制御に関わるという役割を提示しました。FBXL10は脂肪の多い餌を食べて肥満したマウスの白色脂肪にも多く発現していたため、将来的に肥満の制御につながる可能性が考えられます。

The FBXL10/KDM2B scaffolding protein associates with novel polycomb repressive complex-1 to regulate adipogenesis

Inagaki T1,2, Iwasaki S1, Matsumura Y, Kawamura T, Tanaka T, Abe Y, Yamasaki A, Tsurutani Y, Yoshida A, Chikaoka Y, Nakamura K, Magoori K, Nakaki R, Osborne TF, Fukami K, Aburatani H, Kodama T, Sakai J1,2  (1equal contribution2 corresponding authors)  J Biol Chem.  jbc.M114.626929. First Published on December 626922, 622014, doi:626910.621074/jbc.M626114.626929.

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