東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

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Kruppel-like factor (KLF)15は絶食時のミトコンドリア型アセチル-CoA合成酵素遺伝子の転写誘導を促進する

2004年06月05日 00時00分00秒 (#19)

現代社会において、肥満は最も多い慢性疾患であり、肥満に2型糖尿病、高血圧、高脂血症を伴った病態は代謝症候群(metabolic syndrome X)と総称される。過剰な脂肪の蓄積は代謝症候群の引き金となり、これとは反対に「異化」に働くシグナルを活性化することは、蓄積された脂肪分を分解し代謝症候群の改善につながると考えられる。

私たちは絶食時に骨格筋で転写が強く誘導される2型アセチル-CoA合成酵素(AceCS2)に着目し、転写制御機構の解析を行った。我々は絶食による誘導される転写調節機構を解析した。AceCS2のプロモーター領域をクローニングし、DNA配列を解析したところ、転写因子Kruppel-like factor (KLF)の結合配列を5箇所認め、ルシフェラーゼアッセイ及びゲルシフトアッセイにより転写開始地点近傍のKLF結合配列にKLF15が結合することでAceCS2のプロモーター活性が亢進する事を明らかにした。また、KLF結合部位の下流に隣接して存在するGC-boxにSp1が結合し、KLF15と協調して相乗的にAceCS2のプロモーター活性を亢進させる事をSp1が内在性に存在しないSL2細胞 (ショウジョウバエ細胞)を用いたルシフェラーゼアッセイで証明した。GSTプルダウンアッセイも行い、KLF15とSp1がin vitroにおいて結合することも明らかにした。KLF15がin vivoにおいてもAceCS2の転写を亢進させる事を証明するため、KLF15を過剰発現するC2C12 (マウス筋芽細胞)安定型細胞株を作成し、この細胞においてAceCS2 mRNAの発現が亢進している事も定量的RT-PCR法で確認した。KLF15のmRNAが絶食時のマウス骨格筋において対照群と比して約30倍発現の誘導が認められた。

Yamamoto J, Ikeda Y, Iguchi H, Fujino T, Tanaka T, Asaba H, Iwasaki S, Ioka RX, Kaneko IW, Magoori K, Takahashi S, Mori T, Sakaue H, Kodama T, Yanagisawa M, Yamamoto TT, Ito S, and Sakai J. A Kr_ppel-like factor KLF15 contributes fasting-induced transcriptional activation of mitochondrial acetyl-CoA synthetase gene AceCS2. J Biol Chem. 2004 Apr 23;279(17):16954-62. Epub 2004 Feb 10.
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