東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

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インスリン分泌の促進物質のアッセイ系を樹立

2005年06月03日 00時00分00秒 (#20)

酒井研ではインスリン分泌を促進する生理活性物質の精製、同定を試み、ラットの初代膵β細胞を用いたアッセイ系を樹立した。株化された培養細胞でのスクリーニングは製薬企業でもなされているが、初代培養のβ細胞を用いた試みはユニークである。

ラットの膵臓より初代膵島細胞を単離し、カルシウムイメージングにより細胞内カルシウムの上昇をモニターした。このアッセイ系は動物組織から抽出液からHPLC (High Performance Liquid Chromatography)を用いた精製系で生理活性ペプチドを精製、単離できるほどのスループット・精度を有しており、cholecystokinin, vasopressin, gastrin releasing peptideなど幾つかのインスリン分泌促進作用のある既知のペプチドを実際に精製した。

新規ペプチドの発見には至らなかったが、380種類に及ぶ化合物の網羅的なスクリーニングから、新規にリポアミノ酸であるN-arachidonylglycine (NAGly), アンドロジェン誘導体である3b-(2-diethylamino-ethoxy) androstenone hydrochloride (U18666A), and 4-androstene-3,17-dioneを新規のインスリン分泌促進剤として同定した(特許申請中)。 NAGlyは近年リポアミノ酸として明らかにされた天然物で、痛覚などに関与も示唆されている。

4-androstene-3,17-dioneはテストステロンの合成過程の代謝産物である。U18666Aと4-androstene-3,17-dioneはATP依存性カリウムチャネルとは独立した経路でカルシウムを、電位依存性カルシウムチャネルを介しカルシウム流入を促進する新規なパスウェイも示された。 今後それらの受容体、シグナル経路の詳細な解明が必要と考えられる。U18666Aはヘッジホッグシグナル抑制作用を有することから、作用パターンと構造のよく似た4-androstene-3,17-dioneがヘッジホッグシグナル抑制作用があるか否か興味深い。

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