東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 酒井研究室

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GPR103の内在性ニューロペプチドリガンドは、食欲、血圧、覚醒を調節する

2006年05月17日 00時00分00秒 (#22)

Reverse Pharmacologyによるオーファン受容体GPR103のネイティブリガンドの精製

オーファンGPCR(G蛋白共役型受容体)オーファン受容体GPR103の内在性(ネイティブ)リガンドの精製にReverse Pharmacology法によって成功した。このペプチドは極めて微量な存在であることから、血球系細胞とカルシウムリポーター遺伝子を組み合わせた高感度低ノイズアッセイ法によって始めてネイティブリガンドの精製を可能とした。質量分析により脳内にネイティブに存在する構造を明らかにしたところ、43merのRFアミドペプチドで、N端はピログル化されていた。構造的にはバイオインフォマティクスの手法によって以前報告されたQRFPと命名されたペプチドと同一であった。マウスのゲノムにはGPR103AとGPR103Bが存在し、約80パーセントアミノ酸が互いに保存され、おのおの脳の異なる部位に局在していた。ヒト、ラット、マウスQRFPはこれらのレセプターにほぼ等しく結合し、活性化した。

マウスへのQRFPの脳室内投与実験では、摂食の亢進が認められ、摂食はneuropeptide Yを介することが示された。また、脳室内投与により2時間以上持続する血圧の上昇と心拍数の増加が認められた。さらに一種ストレス行動を反映しているgroomingの著明な増加が認められた。

QRFPの発現調節:絶食ではNPY同様にmRNAレベルの増加が認められた。また、レプチンシグナルの欠損したob/ob、db/dbマウスにおいてNPY同様発現が上昇することからレプチンシグナルによる抑制が示唆された。高脂肪食肥満マウスにおいてもQRFPの発現が上昇していた。摂食亢進作用、肥満における誘導やストレスとの関連など最近社会問題化しているメタボリックシンドロームとの関連も示唆された。

A neuropeptide ligand of the G protein-coupled receptor GPR103 regulates feeding, behavioral arousal, and blood pressure in mice. Takayasu S, Sakurai T, Iwasaki S, Teranishi H, Yamanaka A, Williams SC, Iguchi H, Kawasawa YI, Ikeda Y, Sakakibara I, Ohno K, Ioka RX, Murakami S, Dohmae N, Xie J, Suda T, Motoike T, Ohuchi T, Yanagisawa M, Sakai J. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 May 9;103(19):7438-43. Epub 2006 Apr 28.

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